榎田基明
京都市の景観重要建造物の調査で西賀茂の神光院に2度ほど行きました。
神光院は、正式には「放光山神光院」という真言宗、つまり弘法大師・空海を本尊とするお寺で、地元で「西賀茂の弘法さん」呼ばれています。京都で弘法さんといえば東寺が有名ですが、仁和寺と神光院を加えた三寺を「(京の)三弘法」や「京都三大弘法」といい、弘法さんの縁日の毎月21日には江戸時代中期に始まったという「京の弘法巡り」が行われています。
かつては農村地帯だった西賀茂も区画整理事業によって宅地化が進んいます。賀茂野菜の産地ですが、なんとも雑然とした無秩序なまちになってしまっています。区画整理事業は綿密な土地利用計画とセットでやらなければ意味がないことを実証しているようです。そんな中で、神光院とその西の山麓にある西芳寺一帯はかつての面影が残る場所です。
山門を入ると正面の客殿に向かって敷石が延びていますが、中央の四角い植え込みで行く手が阻まれます。客殿の入口への視線を遮るためのようですが、石畳が迂回せずに途切れているのが面白いです。
神光院には明治維新の頃、歌人・陶芸家として知られる尼僧・大田垣蓮月が隠栖していた蓮月庵と呼ばれる茶所が残されています。木立越しに垣間見える庵は隠栖という言葉よく似合う佇まいです。
蓮月庵も調査対象ですが、今日の目的は右手前に建つ「御香水」です。2m四方の柱と屋根だけの建物ですが、図面にするためには結構細かく測らないといけません。結局、小一時間かかってしまいました。
11月末は紅葉の盛りですが、色づいていないものも多くありました。これはこれで美しいものです。
12月に入ってから再調査に行くと、山門に「終弘法」と「初詣」の貼り紙がしてあり、年の瀬が迫っていることを感じました。