桜井郁子
高瀬川・一之船入のすぐ脇に建つ廣誠院を見学してきました。通常は一般公開されていないのですが、知り合いに声をかけてもらって、現在この建物を管理されている法人の方のお話しを聞きつつ見学しました。
この建物と庭園は、伊集院兼常によって明治中頃に造られたそうです。それまでの大きな仕事から身を引いて、本当に個人的な楽しみのために建てたので、子孫に残すつもりもなく、記録がほとんど残っていないのだそうです。この建物を堪能して満足したのでしょうか、実際に明治29年以降には土地・建物を手放しています。
高瀬川の水を池に引き込んでいて、普通であれば北から南へ流していくものなのでしょうが、ここでは流れを逆向きに感じさせるような石組みとなっています。また、狭くはないのにほどよく手の届く感じのする親密感とか、空ではなくて庭を見て欲しいと言っているような深い軒などにも、作り手の思いがこもっているようで、想像するのも楽しいものでした。
夏の終わり、蚊の襲来をよけつつ、まちなかの喧噪から離れての静かなひとときでした。